段ボールで作る意味のない仕事

コルゲーターと呼ばれる段ボール・シート製造機や
製函機の製造最大手メーカーM社から委託された仕事。
1分間に200〜400個の製函印刷能力は世界一で、
全長30mもある大きな機械の20分の1スケール模型を
段ボールで作って欲しいとのことでした。
しかしーーー
段ボール箱を作る機械の模型だからといって、
段ボールで作る意味が私には見出せなかったので、
依頼された当初はお断りしました。
C62の制作準備に入ろうとしていた2016年春のこと、
結局お引き受けすることになりました。
6種類の段ボールを使い、3ヶ月で完成。
稼働する部位は全て実機と同じように動作するかなり細密な模型です。
乾燥を防ぐために展示ケースに入れるコップ一杯の水を
毎朝入れ替えることを制作条件に入れました。

かつて私は、建築設計のためのエスキース模型を
段ボールでたくさん作ってきましたけれども、
それはあくまでも検討用として作るわけですから、
乾燥や湿気などによる変形は覚悟のうえです。
しかし、M社の模型はそういうわけにはいきません。
完成しても湿度の調整をしなければ長期間の展示には耐えられないでしょうから。
それでも製作を引き受けたワケは、或る実験を試みたかったからです。
紙質に特性を持つ数種類の段ボールを適材適所に使用することで
長期保存に耐えられるかどうか、それを確かめたかったのです。
(当然ですがM社の了承は得ております。)
実験の結果は、このあとすぐはじまるC62の制作に大いに役立ちました。
段ボールは一過性の素材で経年変化に耐えられるようにはできていません。
それをいかに長持ちさせられるか、
どんなにデータを積み重ねても成果を得られず、
失敗を積み重ねてわかってくる言わばノウハウとでも言いましょうか、
制作者自身にしか蓄積されないコツのようなものが必要になってきます。
60年間、段ボールと付き合ってきて私もようやくわかってきたところです。

それにしても、このような縮尺模型を段ボールで作る意味を感じない私でも、
機関車の縮尺模型ならいくらか
付き合えるものがあるかと思い挑戦してみましたが、
やはりピンとくるものはありませんでした。
2020年、D51蒸気機関車の5分の1スケールの
段ボール模型を制作しました。

かなり精巧に作り込んだのですが、
だからなんなのさ、
と言われてしまうような気がして、
私としては、やはり原寸じゃないと納得できない
「何か」が欠けているような気がして、
結局満足できない作業となりました。
原寸の魅力をどう表現するか、これからの大いなる私の課題です。
