私の創作テーマ「再現から表現へ」

エレクトーン奏者“826aska(※1)“

と名乗る少女の奏でる楽曲(多くはネット配信)は、

原曲と見まごうばかりの再現性と、

いささか誇張気味に言いますが

原曲をも越える表現性の高さに世界が注目しています。

全楽曲累計2億回に迫る視聴回数の半数を越える

国外からの投稿コメントの多くも、

やはり再現性と表現性の高さを評価するものばかりでした。

各国からののコメントをみて気が付いたのですが、

日本語で言う「表現性」を、どの国の視聴者もほぼ一様に「解釈力」

と言い表しています。

考えてみれば、原曲を解釈したその結果が

自分なりの表現となるわけですから、

最初に来るのはまさしく「解釈」です。

解釈するには思考力の程度が問われるわけで、

果たして創作者としての私の思考力がどれほどのものなのか、

孫のような少女の演奏を5年間聴き続けてきて、

それでもまだ理解に至らない齡72をむかえた老人は、

残り少ない人生をかけて「再現」から「表現」へ向けての

「解釈力」をこれからも磨き続けていかなければならないようです。

平成28年(2016年)、使い古しの段ボール箱4000個を使って製作した

原寸大デゴイチ(D51形蒸気機関車※2)の全国巡回展示を終えた私は、

ひと息つく間もなくシロクニ(C62形蒸気機関車※3)の制作に着手しました。

挑戦したテーマは二つ。

新品の段ボールで日本最大の蒸気機関車をできるだけ詳細に再現すること。

そして、鋼鉄の重量感を段ボールだけで表現すること。

再現と表現のはざまで苦悶する日々が始まったちょうどその頃、

あの少女の衝撃的な演奏(※4)に出会いました。

いかに本物を超えられるか、観察力と解釈力を強化することに

主眼を置くようになったのはこの時からです。

C62に引き続き一号機関車(明治5年鉄道開業時の機関車※5)を制作。

詳細にわたる実機(※6)の実測を試みました。

部位を測る作業をとおして製造当時の工人たちの思いを取り込み

理解することで(つまり「解釈」することで)、

より実物に近いものができるのではないかと考えたからです。

組み立ての順番、接合の仕方など

明治初期の文献を手がかりに部品を制作し、

当時のままの制作工程をとおして「追体験」を試みました。

そうは言っても素材は段ボールですから限度はありますが、

こうした作業を遂行していくうちに、

「この部品はどうしてこういう形になったのか」

モノの形の成り立ちが見えてくるようになりました。

制作過程の追体験を通して先人の知恵や技術を

見直すことの重要性を再認識した次第です。

私の追体験に対する興味は、

150年前の一号機関車製造時をさらに遡って、

千数百年前の甲冑の製造工程に行き着きました。

作業場所を弓・矢を制作する工房(※7)に移し、

いにしえの工人を身をもって体感することにしました。

そこまでやってみないと分からないことが多いと感じたからです。

甲冑、行燈(照明器具「かがり」)、

弓矢・神事用装具、茶室そして原寸大?の龍神像など、

これから制作する作品の多くは、

段ボールの他に木材、竹、土、和紙(八女和紙)など、

日本古来の素材を使用することで創作の範囲を広げていきたいと思っております。

                     

※1 826aska

※2 使用済み段ボール箱4000個を使い、全て手切りで制作。

※3 全て新品の段ボールを使用。総重量3トン。ギネス世界記録に登録。

※4 スターウォーズメロディー(https://youtu.be/Yp5HpjhKHKs

※5 埼玉県おおみや市の鉄道博物館に重要文化財として保存展示。

※6 輸入当初の原型と改良後の島原鉄道型の2機を制作

※7 相良矢工房(福岡県八女市)内に甲冑工房を設置(2022年)

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